今年の箱根駅伝。
駒澤が優勝してあたりまえの下馬評を大きく覆し、なんとなんと青学が優勝。
まさに「番狂わせ」と言ってもいいと思います。
1区では、序盤から先頭に立って駒澤を慌てさせたいと思う各大学に対し、思い通りにはさせないよと、駒澤は3エースのひとり、篠原をエントリー。
駿河台の留学生選手が一人抜け出そうとする展開で、きっと駒澤はニヤリとしたでしょう。
誰かがハイペースで引っ張ってくれる展開は駒澤にとって最もいい展開です。
案の定、篠原はついていき、優勝争いするチームはハイペースでも駒澤についていくしかありません。
日本人学生ならともかく、留学生のハイペースについていく勇気、覚悟は並々ならぬものが必要だったと思います。
しかし、次第にハイペースについていけなくなった國學院・伊地知、青学・荒巻は遅れて行きます。
この時点で、青学びいきの僕は、あーこれは駒澤から1分以上離されそう、とガッカリ。
はい、こっから駒澤の独走!
駒澤優勝!
もう、つまらん!!
と、思ったのでした。
想像した通り、篠原はその後独走。
しかし、青学・荒巻はここから粘りました。
序盤をハイペースで走って、落ちたときって、本当にひどいレースになるものですが、集団に飲み込まれてからも粘りに粘って、なんとか希望の光が消えないギリギリの先頭と36秒差でタスキリレー。
思うに、ここで荒巻が持ちこたえられなければ、青学の優勝はなかったかもしれません。
そういう意味で影の殊勲は荒巻でした。
そして、2区は、青学・黒田が凄かった。
彼もメンタル強すぎですね。
インタビューを受ける様子も終始落ち着いていて、緊張したりとかしなさそう。
レースでは、「集団でどう走ろうか」とか全く考えず、とにかく前を追う。
それだけ。
次第に誰もついてこれなくなる。
終わってみれば、タイムは2時間6分7秒と、圧巻の区間賞。
過去の記録で上にいるのはビンセント、相澤、モグスだけ。
駒澤との差も22秒まで縮めました。
そして、3区。
いったいだれが、予想していたでしょう。
あの駒澤・佐藤圭汰に青学・ 太田蒼生が完勝する展開を。
10000mで今期学生最高の27分28秒で走り、出雲、全日本でも他校を圧倒した佐藤圭汰は誰もが認める「現役学生ランナー最強」だったはず。
太田が中継所で22秒あった差をハイペースであっという間に追いついたとき、「そんなに飛ばしたら最後まで持つはずがない」と誰もが感じたのではないでしょうか?
それを、しばらく並走した後に、引き離そうと仕掛けること数回。
そして、最後は引き離して先頭でタスキリレー。
なんなんだ、この闘争心は!
太田は走る前、「トラックのタイムは関係ない」、「勝つイメージしかない」と周囲に話していたそうですが、ちょっとどころではないタイム差を持つ相手に対して、その姿勢を貫けるメンタルはすごいです。
佐藤圭汰もおそらく調子は悪くなかったはずで、すごいタイムだったんですよ。
(ビンセントを除けば、佐藤圭汰のタイムも過去最高)
しかし、太田はそれをさらに上回るタイムでなんと60分切り。
下り基調とはいえ、21.4kmを60分切れるなら、ハーフマラソンでも60分切れちゃう計算です。
しかし、きっと絶好調でハーフマラソンを走ったとしてもこんなタイムでは走れないでしょう。
本人も、「箱根」だけに絞って調整してきたと言っていたし、前の駒澤(しかも学生最強の佐藤圭汰)を追う展開もあってこそだったのかもしれません。
戦前、青学のメンバーは、「120%の力を出せば駒澤に勝てる」と言ってたんですが、僕は内心「いやいや、120%って。120%って言ってる時点でもう無理でしょう」と思ってたんです。
しかし、まさにこれこそが「120%」だったんですね。
こんな、誰もが思いもよらない展開、駒澤の選手達も佐藤圭汰が負けるなんて想像すらしなかったと思います。
これで駒澤の選手に(藤田監督にも)大きな動揺、ダメージを与えたことは確実で、これがその後の走りに影響したことは間違いありません。
あとは、先頭を走るメリットを活かし続けた青学がそのままリードを広げて優勝。
ハーフを走る持久力はもちろん、トラックの持ちタイム以上の競技力(ロードの力)が問われる箱根駅伝。
「世界で戦える選手」の育成に力を入れる駒沢の強化の中心はやはりトラック。
「トラックのタイムがすごい」と「駅伝の競り合いに強い」はやはり別物なんですね。
結果だけ見れば、奇跡に近い、番狂わせだったかもしれません。
しかし、こういった駅伝の競技力、チームのマネジメント、一体感、モチベーション、すべてをフル動員させて、100%を120%にした青学が最強・駒澤に勝てたのは必然だったのかもしれません。
今回の大会で、箱根駅伝の奥深さがちょっと分かった気がします。